退職代行を使うと、最初に会社へ何が伝わるのか。明日の朝は出社しなくていいのか。会社から電話が来たらどうするのか。
申し込む前は、この「依頼した後」がいちばん想像しにくいところです。
実際は、いきなり代行業者が会社へ電話するわけではありません。先に退職したい日、雇用形態、有給、会社から借りている物、会社へ伝えてほしいことなどを確認し、その内容をもとに勤務先へ連絡します。
その後も、退職届や貸与品の返却、離職票などの受け取りが残ります。会社との会話は減らせても、本人が何もしなくていいわけではありません。
相談
今の状況と希望を伝える
申込・確認
料金・対応範囲・会社情報を確認
会社へ連絡
本人に代わって退職意思を伝える
退職手続き
退職届・返却物などを進める
退職・書類受取
退職日と必要書類を確認する
※支払いのタイミングや会社への連絡方法、サポート期間はサービスによって異なります。
相談する前に、これだけ分かれば話が早い
最初の相談で長い事情説明をする必要はありません。ただ、勤務先へ連絡するには最低限の情報が必要です。
会社名・所属・連絡先
本社ではなく、実際に連絡してほしい上司や人事の連絡先が分かれば伝えます。
雇用形態・契約期間
正社員、契約社員、パート・アルバイトなど。契約社員なら契約終了日も確認します。
いつから出社したくないか
「明日から行けない」「月末までは出社できる」など、希望をそのまま伝えます。
残日数が分かればメモ
正確な日数が分からなくても構いません。給与明細や勤怠システムで分かれば確認しておきます。
会社から借りている物
社員証、PC、スマホ、制服、鍵、保険証など、手元にある物を書き出します。
会社と揉めそうなこと
未払い賃金、損害賠償の話、会社への借金、寮、社外秘資料などがあれば最初に伝えます。
雇用契約書や労働条件通知書が手元にあれば、契約期間や会社の正式名称を確認しやすくなります。未払い残業代などの問題があるなら、給与明細や勤怠記録も消さずに残しておいた方がよいでしょう。
「上司と話すのが怖い」「明日から出社できない」「引き止められて自分では言えない」など、今困っていることをそのまま伝えた方が、必要な対応を判断しやすくなります。
STEP 1|相談では「辞めたい」以外に何を聞かれる?
LINEやフォーム、電話などで相談すると、勤務先へ連絡するための情報と、本人の希望を確認されます。
会社へ連絡する日時や、希望する退職日を決めるための確認です。
退職意思のほか、有給、退職日、本人への直接連絡を控えてほしいことなどを整理します。
返却が必要なPCや社員証、制服などを確認します。
単なる退職意思の伝達だけで足りるのか、交渉や法的対応が必要なのかを分けるためです。
ここで重要なのは、そのサービスが自分の希望まで扱えるかを、会社へ連絡する前に確認することです。
民間企業・労働組合・弁護士では対応できる範囲が同じではありません。会社との交渉が必要になりそうなら、申込前に運営主体も確認しておきましょう。
STEP 2|申込前に、料金と「会社へ連絡する日時」を確認する
依頼すると決めたら、利用規約や料金、支払い方法を確認し、勤務先への連絡に必要な情報を入力します。
ここで急いでいても、最低限次の4点は確認しておいた方がいいです。
- 総額はいくらか後払い手数料や追加料金まで含めて確認
- 会社へいつ連絡するか始業前なのか、本人が指定した時刻なのか
- 誰が会社へ連絡するか運営会社、労働組合、弁護士など実際の対応主体
- 連絡後もサポートが続くか退職届、貸与品、会社からの連絡にどこまで対応するか
料金の支払い時期はサービスごとに違います。先払いのサービスもあれば、退職日決定後などに支払える後払い型もあります。
STEP 3|会社への連絡は、実際にはこう進む
勤務先へ連絡する日時が決まったら、退職代行側が本人に代わって会社へ連絡します。

ここで「退職代行に頼めば、会社と完全に関係が切れる」と考えるのは少し違います。退職代行は会社との連絡窓口になってくれますが、会社が本人へ直接電話やメールをする可能性までなくせるわけではありません。
着信やメールが来たら、まず依頼している退職代行へ内容を共有し、どう対応するか確認します。本人確認や返却物など、本人の対応が必要な連絡もあり得るため、一律に「全部無視すればいい」と考えない方が安全です。
「今日から出社しなくていい」と「今日付で退職」は別
退職代行では「即日対応」「即日退職」といった言葉を見かけますが、会社へ連絡した日と、雇用契約が終わる退職日が同じとは限りません。
「退職したい」と意思を伝える
有給・会社との合意などで出社しない期間になることも
雇用契約が終了
厚生労働省は、期間の定めのない労働契約では、労働者が退職を申し入れた場合、会社が承諾しなくても原則として2週間後に労働契約が終了すると説明しています。
一方、有期労働契約は扱いが異なります。契約期間の途中で辞める場合は「やむを得ない事由」が問題になることがあり、1年を超える有期契約では一定の場合に1年経過後から退職できるルールもあります。
つまり「明日から出社したくない」という希望と、「退職日はいつになるか」は分けて確認した方が分かりやすいです。
STEP 4|会社への連絡後、本人がやること
会社へ退職意思が伝わったあと、本人側には主に書類と返却物の対応が残ります。
必要なら作成して会社へ送る
会社から指定された宛先や様式を確認します。本人の署名・記入が必要なものは自分で対応します。
PC・社員証・制服などを返す
返却方法と送付先を確認し、追跡できる配送方法を使うと記録を残しやすくなります。
会社に残した物をどう受け取るか確認
郵送できるか、会社へ取りに行く必要があるかは勤務先との確認が必要です。
会社からの追加確認を代行側へ共有
書類や返却物について会社から連絡が来たら、自己判断で放置せず対応方法を確認します。
退職代行を使ったからといって、退職届や貸与品を勝手に処分してよいわけではありません。特に会社のPC、スマホ、鍵、機密資料などは、返却方法を確認して確実に返すことが大切です。
また、会社の寮に住んでいる、会社からお金を借りている、社外秘の資料を持っているなど、通常の退職より処理が増えそうな事情は、最初の相談時に伝えておいた方がスムーズです。
STEP 5|退職後に届く書類まで確認して終わり
会社へ行かなくなった時点で、すべての手続きが終わるわけではありません。退職後に必要な書類が届いたかも確認します。
雇用保険の基本手当を申請するときに使います。厚生労働省によると、会社は離職日の翌々日から10日以内に資格喪失届などをハローワークへ提出し、離職票は会社経由で本人に交付されます。
交付を希望しているのに届かない場合は、まず会社へ処理状況を確認し、会社が手続きをしない場合などはハローワークへ相談できます。
年の途中で退職した場合、国税庁は退職の日以後1か月以内に交付する必要があると案内しています。転職先での年末調整や確定申告などで使います。
自動的に全員へ送られる書類とは限りません。労働基準法22条では、労働者が使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職事由などについて証明書を請求した場合、会社は遅滞なく交付しなければならないとされています。
会社独自の退職手続きや、健康保険・年金・税金の切り替えなどは、その人の状況によって必要な対応が変わります。次の勤務先が決まっていない場合は、退職後の公的手続きも別途確認してください。
会社から家族や実家へ連絡されることはある?
退職代行側から会社へ「本人への直接連絡を控えてほしい」「連絡は代行側へ」と伝えるサービスはあります。
ただし、それは会社が本人や家族へ絶対に連絡できなくなるという意味ではありません。
会社が緊急連絡先として家族の番号を持っていたり、本人確認や返却物について連絡が必要だと判断したりすれば、直接連絡してくる可能性はあります。
「実家には連絡してほしくない」など事情がある場合は、依頼時に退職代行へ伝え、勤務先へどう依頼してもらえるか確認しておきましょう。
いつもの流れで進まないケースもある
LINEで相談して会社へ一本電話してもらえば終わる人もいますが、次のような事情があると対応が増えることがあります。
- 有期契約の途中で辞めたい
無期契約とは退職ルールが異なるため、契約期間や事情の確認が必要です。
- 未払い給与・残業代を請求したい
会社へ意思を伝えるだけでなく、金銭請求や交渉が必要になる場合があります。
- 会社から損害賠償をすると言われている
具体的な法律問題になっているなら、弁護士への相談を優先した方がよいことがあります。
- 会社の寮・社宅に住んでいる
退去日、鍵、荷物、費用など、雇用契約以外の確認も必要になります。
- 会社に借金がある・会社の物を紛失している
退職意思を伝えるだけでは処理できない問題が残る可能性があります。
- 役員・業務委託など一般の労働者と立場が違う
通常の雇用契約と同じ退職ルールがそのまま当てはまらない場合があります。
こうした事情を隠して申し込むと、会社へ連絡したあとに「そのサービスでは対応できなかった」と分かることがあります。心当たりがあるものは、相談時に先に伝えておく方が安全です。
申し込む前に、この7つだけ確認しておく
- 1
いつ会社へ連絡するか
自分が出社しない日とのズレがないか。
- 2
実際に誰が会社へ連絡するか
民間企業、労働組合、弁護士など対応主体を確認。
- 3
自分の希望は対応範囲に入るか
有給、退職日、未払い賃金など必要な内容を伝える。
- 4
会社から直接連絡が来たらどうするか
依頼後の連絡ルールを先に聞いておく。
- 5
退職届・貸与品はどう返すか
送付先や返却方法までサポート対象か確認。
- 6
退職後の書類までフォローされるか
離職票などが届かない場合の相談先を確認。
- 7
最終的な料金はいくらか
追加料金、後払い手数料、交渉費用なども見る。
退職代行の流れでよくある疑問
相談したら、すぐ会社へ連絡されますか?
通常は、相談だけで勝手に勤務先へ連絡されるものではありません。サービス内容や料金を確認して正式に依頼し、会社情報や連絡日時などを決めてから実行する流れが一般的です。
ただし、申込方法や契約成立のタイミングはサービスごとに異なるため、利用規約も確認してください。
退職代行が会社へ電話した日は、自分は何をしていればいいですか?
会社へ連絡する時刻や当日の動きは、依頼したサービスの案内に従います。会社からの回答をすぐ確認できるよう、退職代行からのLINEや電話は確認できる状態にしておくと進めやすいでしょう。
会社から自分のスマホに電話が来たら出ないといけませんか?
まず退職代行へ着信やメッセージの内容を共有し、対応方法を確認するのが無難です。代行側を窓口にしてもらえるケースはありますが、本人確認など本人自身の対応が必要な連絡もあり得ます。
退職届は退職代行が書いてくれますか?
退職届の書き方や送付方法を案内するサービスはありますが、本人の署名・作成が必要な書類まで代行側が本人として作成できるとは限りません。会社から指定された方法と、利用サービスの対応範囲を確認してください。
会社に置いてある私物はどうなりますか?
郵送してもらえる場合もありますが、会社の対応によります。何を置いているかを退職代行へ伝え、勤務先と受取方法を確認してもらいましょう。
離職票が届かなかったらどうすればいいですか?
離職票の交付を希望しているのに届かない場合、厚生労働省はまず会社へ処理状況を確認し、会社が手続きをしない場合などは住居所を管轄するハローワークへ相談するよう案内しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律相談ではありません。退職代行の申込方法・支払い時期・対応範囲はサービスごとに異なります。雇用契約や会社とのトラブルに法律上の争いがある場合は、弁護士や公的な労働相談窓口などへの相談も検討してください。
